ユーザ用ツール

サイト用ツール


教育システム:メキシコの教育制度

メキシコの教育制度

日本政府観光局(JNTO)及び観光庁が、訪日政策における2020年の重点市場に指定するなど、現在、最も日本との関わりが加速しているメキシコ。
経済成長率も2010年以降堅調に増加しています。そんな経済成長の1つの要因となっているのが「教育」。
教育レベルの向上は、メキシコ経済の拡大に大きく関係してきています。一方で、教育に関してはメキシコならではの課題も存在。
今回は、日本ではあまり知られていないメキシコの教育制度について、基本情報から独自に抱える課題、新たな政策までご紹介します。

義務教育

メキシコは32の州から成り立っており、それぞれの州に義務教育までの権限が渡っています。
義務教育の期間は2013年以前は中学校までとされていましたが、2013年の法改正以降、日本と同じ、幼稚園~高校(3歳~18歳)までとされています。
特徴は様々あり、その内の1つが「公立」の小学校、中学校では午前部、午後部、夜間部の3部制が取られているということ。
生徒によっては家の自営業のお手伝いをする必要がある、といった家庭事情があり、時間によっては学校に通えない子も多く存在するため、 「就学率向上」を目的に3部制としています。
また、「公立」であれば義務教育課程内は授業料、教科書代が無料といった特徴もあります。
「私立」でも国指定の教科書代は無料で、ただし補助教材は有料となっています。
■参考:外務省 諸外国・地域の学校情報

教育制度に対する課題

2013年の法改正により、義務教育がそれ以前は中学校までであったのが高校までとなった結果、高校を卒業する生徒の数は格段に増加しました。
一方で、現在、大学に在籍するメキシコ人学生数は18歳~23歳人口の29.5%とされ。この数字は他先進国と比較した場合に低い数字とされています。
この数字が低い理由として「中退者が多い」ことが挙げられます。
では、メキシコでは何故中退者が多いのでしょうか。
それは、メキシコならではの教育制度への課題が原因とされています。

課題①経済問題

OECD(経済開発協力機構)の統計によると、メキシコ人の一般平均年収は約172万円。
これは、OECD加盟国中最下位の数字となります。また、政府が学生一人当たりに支出する金額もOECD加盟国中最下位となっています。
義務教育から外れる大学では授業料や教材費が有料となる中で、このような経済状況や経済対策から大学への費用が支払えない家庭が多くあります。
結果として、経済問題は中退者を増加させる大きな要因の1つとなっています。
■参考:OECD Data Average wages

課題②教員の質の低下

教員の質の低下も、学生数が増加しない1つの要因となっています。
教員の質が低下する理由として、「教員採用プロセスの不透明さ」が挙げられます。
教員の採用基準、また試験項目があいまいであることが原因とされており、結果として、生徒は教員から満足のいく授業が受けられないということを理由に、退学してしまうケースが多く存在します。

課題③地域による教育水準の差異

メキシコは32の州から成り立っており、32州それぞれが州内の教育に対する権利を持っています。
そのため、例えば都心部ではテクノロジーを導入した最新教育を受けられる一方で、地方の州では未だにアナログな、教育に大きく費用を割けられない場所もあります。
従って、国全体で一定の教育水準を保つことができず、地域差のある、不平等を呼び起こす結果となっています。

教育制度に対する新たな取組み

現在、メキシコ政府は政府の政策資金の多くを教育分野へ支出し始めており、2019年にはその額はOECD加盟国内でトップとなりました。
この資金は特に、州による教育水準の差異を無くすことを目的とし、各州の「テクノロジー拡大」に使用されています。
地方にある州にも「タブレット端末」や「オンライン授業」の導入を進めることで、全国で一定水準の教育を受けられるような仕組みを施しています。
また、教員に対する給与向上にも努めており、特に大学教員に対しては, 約545万円/年と、OECD内平均額である約386万円/年を上回る額となっています。
このことは教員のモチベーション向上へ繋がり、教員の質を高める結果となっています。
■参考:OECD EDUCATION AT A GLANCE 2019

まとめ

メキシコには日系企業が多く進出していることもあり、メキシコに住む日本人が増加傾向にあります。
従って、特に日本人にとっては今後ますます注目すべき国になるかと思います。
そのような状況の中で、教育制度の向上は、これから先のメキシコの経済成長への大きなカギとなります。
そして現在、政府が多くの資金を教育へ投資し始めていることから、近い将来メキシコのさらなる発展が予想されるでしょう。
また、教育制度が改善されていくことで、今後メキシコに留学を希望する方も増えていくかと思います。
メキシコ国内の経済上まだまだ向上の余地はありますが、テクノロジーを使用した最先端の授業を展開し始めていることから、ぜひ、これからより多くの方がメキシコへ留学し、現地の教育を受けてみることをお勧めします。

教育システム/メキシコの教育制度.txt · 最終更新: 2021/02/17 17:12 by ryugakupedia