以前のリビジョンの文書です
2016年にOECD (経済協力開発機構)がまとめた80の国と地域で15歳の子供対象の「2015年OECD PISA調査 (国際学習到達度調査)」で、科学、数学、読解力の全ての分野でシンガポールがトップの成績であったという結果があります。 ちなみに日本は、科学2位、数学5位、読解力8位でした。 現在では、東南アジアの中で1番の経済大国と言われるシンガポールですが、この背景には、高い教育水準が関係していると言えます。 シンガポールの就学前教育機関は、2歳~4歳対象の保育園 (Child Care Centre)、5~6歳対象の幼稚園 (Kindergarten) があります。 ここでの授業は、初等教育と同様に英語と母語の2言語で行われています。 そして、6歳から小学校 (Primary School)、12歳から中・高等学校 (Secondary School)に通います。 小学校までが義務教育ですが、ほとんどの学生が中・高等学校まで進学します。 そして、大学進学を希望する生徒は、任意の教育機関である大学進学準備コース (Post-Secondary School)に進みます。 こちらは、大学進学を目指す学生は必須になっており、ここでの成績によって進学できる大学が決まります。
2点あります。 1つ目は、ストリーミング制です。 ストリーミング制とは、12歳の初等教育終了時に行われるPSLE (Primary School Leaving Examination ) という、中・高校進学のための選抜試験の結果によって進学するコースが決まる制度の事です。 シンガポールでは、中・高校に進学希望の学生は、必ずPSLEを受験しなければなりません。 日本のように、学区内の公立学校に自動的に進学できることはありません。 PSLEの結果によって、Express、Normal (Technical)、Normal (Academic)に振り分けられます。 Expressが最上位のコースであり、約60%の学生が在籍しています。その後、Normalに進学した学生は、中学4年修了時にGCE-N試験を受験します。 この試験での成績優秀者は、中学5年生に進級する事が出来ます。 そして、大学準備コースへ入学するためのGCE-O試験を受験する事が出来ます。 つまり、GCE-N試験は、PSLEで成績が悪かったけど、大学進学を希望する生徒への救済措置のようなものです。 そして、大学進学か専門学校進学かを決定するGCE-O試験を受験して、その結果によって進路が決定します。 つまり、シンガポールの教育では、早期に自分の進路が決定されてしまいます。このストリーミング制こそがシンガポール教育制度の最大の特徴です。 2つ目の特徴は、バイリンガル制です。 シンガポールでは、英語と母語 (中国語・マレー語・タミール語) を学ぶ制度がとられています。 シンガポールは、かつてイギリスの植民地でしたが、中国系、マレー系、インド系などの多民族が共に生活をする多民族国家であることから、共通語を必要としました。 そこで、アジア圏では珍しいですがイギリス植民地時に使用されていた英語を公用語としました。 教育では、公用語である英語と母語の二言語で行われています。
シンガポールの義務教育は、小学校に通う6歳~12歳の6年間です。 シンガポールの小学校では、3本柱で教育しています。 1つ目は、Subject-based Learning (基礎)です。言語、数学、科学、芸術、音楽、社会学を勉強します。 また、英語学習にも重点を置いています。 2つ目は、Knowledge Skills (知識)です。 知識を高めて活用し、題材に沿ってプロジェクトに取り組む教育をしています。 3つ目は、Character Development (人格形成)です。 人間関係や社会に対しての意識が高くなるように社会性や他者とのコミュニケーション能力を身につけます。
そんな高い教育水準を誇るシンガポールの教育の特徴であるストリーミング制度ですが、2024年から段階的に廃止する事をシンガポール教育省より発表されました。 既に、義務教育段階である初等教育におけるコース別のトラッキング制度は2008年に廃止されています。 それと同様に中等教育でも行われると考えられています。 これは、2004年に就任した現首相であるリー・シェンロン氏によって打ち出された「Teach Less Learn More」という教育方針によるものです。 これは、これまでの知識伝達型の教育から生徒の多様性に対応した柔軟性の高い教育への変革であります。 これまで、PSLE後に学力が飛躍的に伸びても決められたコースから出る事が出来なかったので限界を作られてしまっていました。 そのExpress、Normal(Technical)、Normal(Academic)の3つに別れていたものが、生徒の能力によって科目ごとにレベルを選べるようになります。これにより、自分の得意科目、興味ある科目を選択でき、学ぶモチベーションも上がると考えられています。 さらに、近年ではEdTechへの関心が高まっています。EdTechとは、教育(Education)とテクノロジー(Technology)を組み合わせた造語で、教育領域に革命を起こすビジネスやサービスなどの総称です。2019年11月に「EdTech Asia Summit 2019」がシンガポールで開催されました。ここでは、ITが学習方法や授業内容に及ぼす影響等について議論されました。 2008年から実施されている教育政策である「フューチャースクール@スクール」によってICT教育を計画的に推進しています。実績として、3D空間や教育用ゲームなどの多様なツールを活用した学習展開や、学校のネットワーク環境の充実等があります。
出典:シンガポール教育省(MOE):Education System( https://www.moe.gov.sg/education/educatio